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建築情報
2017/05/25

システムから生まれた伝統美

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「うどん県」として有名になった香川県だが、
キャッチフレーズは「それだけじゃない」と続いている。
2016年のプロモーションでは、「アート県」であることをうたい、
県内の美術館やアート・イベントなどを紹介している。
そのPRムービーで最初に取り上げられるのが、県庁舎の建物である。
戦後に建てられた現役の庁舎が観光資源になっている例は全国でも珍しい。

香川県庁舎は1958年、丹下健三さんの設計で竣工した。
もともとはこれが本館だったが2000年に地上22階建ての新本館が
同じく丹下さんの設計で隣に完成した為、現在では東館と呼ばれている。
鉄筋コンクリート造のモダニズムでありながらも、
日本の伝統木造の美しさを併せ持った建築として香川県庁舎は高く評価された。

日本の伝統建築とモダニズムの融合といえば、
上に入母屋の屋根を載せた、いわゆる帝冠様式がはやった。
しかし、香川県庁舎は誰の目にも分かりやすい「和風」を屋根を架けずに実現させている。

また、丹下さんには伝統よりもさらに重大な設計上のテーマがあった。
それは、コア・システムとモデュロールだ。

コア・システム・・・階段、エレベーター、水回り、設備シャフト等を集めて配置し、これに構造を負担させる方法。
モデュロール・・・人間の身長と黄金比から、数列を導きだす、ル・コルビュジエが開発した寸法のルール。

コア・システムとモデュロールのシステムを徹底することによって香川県庁舎は公倍数のような建築になった。
実際、香川県庁舎ができた後、これに似た庁舎が日本各地で建てられていく。

「うどん県」でもあり「建築県」でもある香川のシンボルとしてこれからも愛されていくに違いない。