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建築情報
2018/04/23

熊本城再建 ‐制振補強でよみがえる天守閣‐

ブログ

建築雑誌よりご紹介させていただきます。


2016年4月の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城。
現在、天守閣を「復興のシンボル」と位置づけ、制振補強による再建を目指している。


今回の地震による内部被害を調査した結果、大天守閣最上階の
鉄骨(S)造で築かれた柱脚が破損し耐震性がほとんど損なわれていることが判明した。

そこで、最上階である6階の再構築、4階にブレースを追加することによる剛性の向上、
地震時に応答変形が大きくなる地下1階から地上3階に制震ダンパーの組み込み、
炭素繊維による梁の補強、吊り材の補強などを行うことで
震災前0.3台だった構造耐震指標・Is値を今回の改修で0.75相当まで上げるとした。
これは建築基準レベルの1.25倍の数値だ。


しかし、建物を丈夫にすると今度は建物を支える杭に大きな負担がかかってしまう。
熊本地震では杭の損傷は確認されなかったが、構造解析の結果、建物の剛性が高まると
この既存杭に損傷を与える可能性が浮上した。

ただ、大小天守閣の内部はそれぞれ、中央の階段スペースを取り巻く形で展示空間と
なっており、従来通り制振ダンパーを配置すると要求性能を満たせなかった。


その問題の突破口となったのが、大林組が自社開発した「クロスダンパー」だ。

大林組の自社特許技術「ブレーキダンパー」にオイルダンパーを貫通させたこれは、
中地震ではオイルダンパーが動き、大地震ではブレーキダンパーが合わせて動く。
2種類のダンパーを組み合わせることで、合理的に建物の大変形を防ぐのが狙いだ。

また、クロスダンパーは限られたスペースでも要求性能を満たすことを可能にした。
複数の制振ダンパーの導入により、大地震時において建物に生じる60%以上の地震力を負担することとなった。


この制振ダンパーの取付は18年8月ごろを予定している。