「宇宙建築」に建設会社が本腰 -国内市場2.4兆円に向け建築界が貢献-
建築雑誌より紹介させていただきます。
宇宙開発時代の扉が開きつつある。
月や小惑星で採掘した資源を地球に運ぶ日常はそれほど遠い未来ではないかもしれない。
大林組が構想する技術、宇宙エレベーターは、
宇宙から長さ約10万kmのケーブルを地上に垂らし、
「クライマー」と呼ばれる車両が昇降する人類最大の建築物である。
政府は2030年代の早い時期に国内宇宙産業の市場規模を現在の2倍に拡大する計画だ。
現在の市場規模は1.2兆円。
内閣府は5月に「宇宙産業ビジョン2030」を発表し、宇宙開発に注力する姿勢を示した。
宇宙エレベーター要素技術実証研究開発チームの石川幹事は、
「完成までは20年ほどかかる予定の為、2050年過ぎになる構想だ」と説明。
大林組の宇宙エレベーター構想は
「垂直移動するモノレール」のイメージに近い。
カーボンナノチューブでつくるワイヤーの長さは約10万km。
その長さを6両編成の「クライマー」が時速200kmで登る。
全工程は約3週間。
中間点となる静止軌道に向かうにつれて地球の重力から開放される。
宇宙エレベーターには人口衛生や宇宙船の発射ゲートとしての役割もある。
クライマーで人口衛生などを運んで静止軌道に投入したり、
火星に向かう宇宙船を遠心力で放り投げることにより、
ロケットで加速して重力を振り切る必要がなくなる。
そのため、発射にかかる費用を下げることができる。
宇宙建築に積極的なのは大林組だけではない。
清水建設は30年前の1987に、国内大手建設会社で初めて「宇宙開発室」を立ち上げた。
清水建設は、米アポロ計画で持ち帰った月の石の組成を分析してレゴリス(月の表面を覆う砂)を
再現する模型砂をつくり、無人施工作業などの実験を進めてきた。
清水建設未来創造技術センター宇宙・ロボットグループの青木グループ長は、
「レゴリスは酸素を多く含んでいるため、地球から水素を運べば水がつくれる。
そうすれば、月面で建材をつくることも夢物語ではない」と話す。
米国では小惑星から超高層タワーを吊り下げ、地上の災害とは無縁の雲上に暮らす
「アナレンマ・タワー」と名付けた超高層建築の構想を発表し話題となっている。